第27章 翔ぶ
「……だからオレと一緒にいるのがどうしても嫌でなければ考えてくれ、オレとの結婚を」
「………」
マヤは考えている、レイの言っている内容を一生懸命に。
……レイさんのことは顔を見るのも嫌なんてことはないわ。一緒にいて楽しいし、好きよ… 友人として。
結婚する前から激しく愛し合っていなくても結婚はするだろうし、結婚してから深く愛し合う夫婦もいっぱいいる。
レイさんの言っていることは間違っていないけれど、やっぱりどうしたって今ここで、“わかりました。結婚します” とは言えない。
……どうしてだろう?
どうして私はレイさんのプロポーズを受け入れる気になれないのだろう?
心に浮かんでくるのは、ただひとりの顔。
……リヴァイ兵長…。
この想いがある限り無理なことは、初めからわかっているはず。
王都では想い人がいることは言えなかったけれど、今こそ言おう。
いや言わなくては。
……それがレイさんへの誠意だもの。
「レイさん、私…」
どう切り出そうかと言葉を選んでいると、またレイの方が先に。
「待ってくれ、もうひとつ聞いてくれ。今日、団長にマヤとの結婚を申しこんできた」
「……えっ?」
マヤの驚きなどは想定済みだと、レイは顔色を変えずに話をつづける。
「少しは難色を示されるだろうと覚悟して行ったが、あっさりと承諾してもらった」
「………!」
もう驚きのあまり、“えっ” という発声すらできない。その大きな目を見開き、口も開いたまま… かたまってしまった。
……どういう… ことなの?
エルヴィン団長に申しこむ?
それだけでも驚きなのに、承諾してもらった?
いくら団長でも私の結婚の問題を、私の意見も求めずに勝手に決められるものなの?
「言っている意味がわからないんですけど…」
当惑と少しばかりの猜疑で…、マヤの声は掠れている。
「今日の昼に正式に申し入れた、マヤと結婚したいと。本来ならば親御さんに頭を下げるのがすじだとは思うが、とりあえずは今所属している兵団の責任者だからな、エルヴィン団長は…」
そこまで話すとレイは、マヤのひどい顔色に気づいた。
「一番に考えるべきことはマヤの気持ちだよな。そこは悪ぃと思っている。だが… どうしても王都に迎えたいんだ」