第27章 翔ぶ
ペトラの問いに対して電光石火のごとくマーゴが反応する。
「マヤがさ、リヴァイ兵長とここに来なくなっちまっただろう?」
再び親指で、食堂の床を激しく指した。
「だから一体どうしたんだいって。今、噂になっている白薔薇王子と関係があるのかって訊いてたんだよ」
「あぁぁ…、なるほど」
ペトラは納得したかのような声で相槌を打ちながら、ちらりとマヤの様子をうかがう。
そして困った顔のマヤを見るなり即答した。
「どうしたも何もないですって、マーゴさん。兵長はマヤに今は執務の手伝いはいいからって言ったんです。そりゃマヤはそもそもミケ班ですし、永遠に兵長の直属みたいに手伝ってるのも変? かなとか思ったんじゃないですかね?」
ペトラは適当に想像を混ぜて、答えていく。
「それで執務の手伝いがお休み中だから、晩ごはんも一緒に行かなくなったってだけで、深い意味なんかないし。そのうち時間が合えば一緒に食べたんだと思うけど、ほら、レイさんが押しかけてきたから時間がないという…。それだけのことですよ」
「へぇ、そうかい。じゃあ白薔薇王子のせいではないけど、時間が取れないってところは王子のせいなんだね…? あれ? 結局王子のせいなのかい? ややこしいね、あたしには難しいよ」
口をへの字に曲げて、両手でお手上げだといったポーズを取るマーゴを見て、ペトラは笑った。
「そんな難しく考えることはないと思うけど。レイさんが王都に帰って、またマヤが兵長の執務の手伝いをするときがきたら、食堂にも毎晩一緒に現れますって。ね、マヤ?」
「うん、多分…」
マヤは兵長の執務の手伝いを、またさせてもらえるかどうか自信がなかったので、力なく答えた。
「そうかいそうかい! なら、いいんだよ! いやね、せっかくジムが諦めたっつーのに兵長じゃなくキザったらしい貴族のボンボンなんかとくっつかれたら、たまったもんじゃないからね」
マーゴはご機嫌だ。
「しかしマヤ、あんたも大変だね。王都からわざわざやってきた貴族の相手をずっとしなくちゃならないなんてさ」