第27章 翔ぶ
……マヤにはもう… 執務の手伝いをさせねぇ。
そう決めたら、マヤに告げなければならない。
来たときに言えばいいのだろうが、この執務室で… 俺とマヤの二人しかいないこの空間で、うまく言える気がしない。あの琥珀色の瞳に見つめられたら、決意が鈍りそうだ。
だがマヤにいつまでも執務をさせるのは互いのためにならない。
……そうだ、ミケの部屋で言えばいいんじゃねぇか?
いつもは邪魔でしかないミケだが、恐らく俺とマヤのあいだに流れるであろう気まずさを中和してくれそうだ。やつに頼るのは癪に障るが、そうも言ってはいられねぇ… 今は。
ミケの部屋へ休憩に行かないでおこうかと思っていたのだが、今日を最後にすればいい。
そうして隣に出向き、最善を尽くして帰ってきた訳だが…。
果たしてこれで良かったのだろうか。
リヴァイは苦悶の視線を書類の山にぶつける。
とりあえず今は、こうするしかなかった。
……だろ?
マヤの気持ちを知った今、何もなかったふりをしてこの執務室で一緒に執務などできない。
……これで良かったんだ、もう考えるな。
強制的に思考を遮断して、ゆっくりとまぶたを閉じた。
しばらくして目を開けたときにはもう、リヴァイはその青灰色の瞳の奥から苦悩の色を隠すことに成功していた。
椅子に預けていた背すじをぴんと伸ばして、書類の山に手を伸ばす。
窓からは初夏の夕暮れの気配が色濃く流れてきていて、まだ明るさを残している。
マヤがいないリヴァイの執務室には、書類をめくる音とペンを走らせる音だけが暗くなるまで休まずに響いた。