第26章 翡翠の誘惑
脳内でハンジの声がこだまする。
……ケミストリーを起こすのは俺ではなく、リヴァイとマヤか…。
マヤのために応援する気ではいるものの、どこか淋しいような気がしてフンと鼻を鳴らす。
そしてそのままなんとなく、窓の外に意識を移した。
「……マヤがいる…」
マヤの匂いを、マヤの存在を、マヤのことだけを考えていたら、そこにいるなんて。
ミケは運命のようなものを感じて、花壇のそばに立っているマヤから目が離せなかった。
「えっ、どこどこ?」
ミケのつぶやきをいち早く聞きつけて、ハンジがやってきた。ミケが答えるまでもなく、すぐにマヤを見つける。
「ほんとだ! ラドクリフもいるね」
「あぁ」
「ねぇねぇ、リヴァイ… マヤがいるよ… って! いるなら言ってよ!」
マヤがいると教えようとして振り返ると、すぐ後ろにリヴァイが立っていてハンジはのけぞって驚いた。
「いちいちお前に、どこにいるか伝える必要はねぇ」
律儀に返しながらも、その視線は花壇のマヤに釘づけだ。
「あ~、笑ってる。マヤはやっぱり可愛いねぇ! 何を話してるんだろう? っていうか大体なんでラドクリフと一緒にいるんだろう…? ねぇ… リヴァイ、知ってるかい?」
「……知るか」
「ラドクリフが会議室を飛び出していったのって、食堂じゃなかったのかな? ミケ、どう思う?」
「食堂のはずだが」
「だよねぇ? でも… もしかしてマヤと約束してたとか?」
「……まさか。ラドクリフはマヤよりメシだろう。あいつはメシか花だ」
「あはは、そうだね!」
ミケの言葉に笑っていたハンジだったが、あっと声を出す。
「マヤが帰るね。ラドクリフは花壇に残るみたいだ。ほんと何してたんだろう? リヴァイ、どう思う… って!」
振り返ると背後のリヴァイは、いつの間にか消えていた。