第26章 翡翠の誘惑
それからしばらく経った、場所はリヴァイの執務室。
「おい、お前ら… なんでここにいる…?」
リヴァイは非常に迷惑そうに、ソファに仲良く並んで座っているミケとハンジに訊く。
「え~、だって見たいもん。ねぇ、ミケ!」
「……あぁ」
ミケはハンジの言葉にはあまり注意を払わず生返事をしながら、しきりに鼻をスンスンとうごめかしている。
「……何を見たいんだ?」
「そんなの、リヴァイがどんな顔して調整日の申請書を書くのかに決まってんじゃん」
「……あ?」
「いやぁ、さっきの君の顔ったら! エルヴィンが調整日の話を持ち出すまでは居合わせた全員を削ぎ殺しそうな勢いだったけど、途端に大人しくなってさ」
「……チッ」
リヴァイは会議室でのやり取りを思い出して、舌打ちする。
マヤたち三人だけの王都行きには何がなんでも反対だったが、いくら訴えてもエルヴィンは変更する気はないようだった。
……だが、調整日に好きにすればいいなどと俺が堂々と同行できる案を示唆しやがった。
妙案にはっとして少し目を見開いた俺にエルヴィンは微笑むと、それ以上は何も言わずに会議室を出ていった。
……クソッ、完敗じゃねぇか。
忌々しいような、感服するような、少し嬉しいような、気恥ずかしいような、複雑な気持ちで俺も会議室を出る。
すぐにでも調整日の申請をしなければ。
自身の執務室に戻れば、もれなくミケとハンジがついてきた。
「……見世物じゃねぇんだ、出ていけ!」
「えぇぇ、いいじゃん! リヴァイのケチ!」
ハンジが抗議の悲鳴を上げ、ミケはスンスンし終えたのか難しい顔をしてつぶやいた。
「……マヤの匂いが弱い…」
「ミケ、マヤの匂いを嗅いでたの?」
ハンジが隣に座っている、やたら大きな男に訊く。
「あぁ。いつもはもっとマヤの匂いが濃い」
「へぇ! やっぱ毎日、夜にマヤを連れこんでるからだね。でも今日は会議だったから匂いがしないんだ」
「そうだろうな」
好き勝手に話している二人に、リヴァイの怒りが爆発した。
「てめぇら、いい加減にしやがれ!」