第26章 翡翠の誘惑
「いつか贈りたい相手ができたら贈ればいい。薔薇やキキョウの他にもいい花言葉はいくつもあるからな、知りたかったらいつでも教えてやるぞ?」
「了解です」
マヤは淡紅色の桔梗の隣で咲いている、鮮やかなオレンジ色の花を指さした。
「じゃあ早速ですけど、マリーゴールドの花言葉はなんですか? こんなに綺麗なオレンジ色のお花だし “元気” とか “応援” とか?」
きっと前向きでポジティブな花言葉だろうと予測したのだが、ラドクリフの答えは。
「あぁ、マリーゴールドの花言葉は “嫉妬” に “悲しみ” だ」
「えっ!」
驚きのあまり目を大きく丸く見開いているマヤに、ラドクリフは優しくつけ加えた。
「驚くよな…。マヤの言うように、こんなに明るい色の可愛い花なのに」
「はい…。びっくりしました」
「あはは、だよな。でもいい意味もあるんだ。えっと、確か… “変わらぬ愛” だったかな」
「嫉妬に悲しみ、変わらぬ愛? なんか花言葉って難しくないですか?」
「そうだよな。まぁ、深く考えんでもいいかもな。俺もビアンカに教えてもらったのを鵜呑みにしてるだけだし。そうだ、マヤ。占いは好きか?」
「……占いですか…?」
なぜ突然、占いのことなど訊いてくるのだろうかと訝る気持ちで声が低くなるマヤ。
「そう、占い。誕生月で運勢を予言する占いがあるだろ?」
ミケ分隊長が毎日読んでいる新聞にも “今日の運勢” なるコーナーがあることを思い出す。
「……ありますね。あんまり気にしない方ですが」
「そうだろ!?」
「……はい?」
「だから、ああいう占いは自分にとって都合が良ければ信じて、悪ければ無視するだろ?」
「まぁ、そうですね…」
確かに良いことが書かれていれば悪い気はしないし、悪いことだった場合は考えないようにするだけだ。
「花言葉も一緒じゃねぇか? 都合のいい言葉だけ取り入れて、悪いのは放っておけばいい!」