第26章 翡翠の誘惑
「あの、分隊長…。花言葉は、花そのものを贈ったときにだけ意味があるのですか?」
「んん?」
ラドクリフはマヤの言いたいことが、すぐには理解できなかった。
質問が一発で通らず、マヤはますます顔を赤くしながら訊き直す。
「えっと…。花束や植木鉢とかで贈る花だけじゃなくて、たとえば花の絵などのモチーフにも花言葉は適用されるのですか?」
マヤは気になったのだ。
リヴァイから贈ってもらったティーカップが桔梗の絵柄だった。そして思いがけず桔梗の花言葉を知って天にも昇る気持ちになったのだが。
そもそもプレゼントしてもらったものは桔梗の絵を描いたカップであって、桔梗そのものではない。
もしかしたら花言葉は関係ないのではないか。
「適用なんて堅苦しい言い方も変だが、適用されるぞ、もちろん。故郷で好きな女に薔薇やキキョウを贈る話をしただろ? 花束だけでなく薔薇の花の絵が描かれたハンカチだったり、絵のうまいヤツだったら自分で描いたものを贈ったりな」
「そうですか…」
「あぁ。要は気持ちの問題だからな。想いを花に乗せていくんだから、それが花そのものだろうと花の絵だろうと関係ないんじゃねぇかな。なんだ、マヤ。キキョウの絵でも贈るつもりなのか?」
「いえ! 違います…!」
慌てて否定しているマヤの赤い顔をじっと見ていたラドクリフは、急に色々と事情を思い出した。
……そうだ、マヤたちが王都に行く前に、ハンジがなんか言っていたっけ。
リヴァイがマヤとデートしたとか。リヴァイが惚れてるとか。マヤとリヴァイの恋だとか。
何を訳のわからんことを言っているんだ。
リヴァイが女に惚れるとか意味がわからん。
さらにマヤがリヴァイを?
……なんて思っていたけど、今のマヤの反応を見ている限り、まるっきりの嘘っぱちでもないのか?