ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《クリスside》
「…ぼく、知ってるよ。調べたんだ」
「……いや、その…」
「ねえ、ぼくとセックスしようよ!あの女のことはもう許してあげるから…!」
「だめだ…クリス…」
「……ダリウス、なんで…っ」
「…キミをこれ以上傷付けられない」
「もうこれ以上傷付くことなんてないよ…!それとも、ダリウスはやっぱりぼくのことをはじめから恋人だなんて思ってなかった?ずっと…弟だって思ってたの?」
「そんなことない!…俺は、クリスのことを本当に愛してた…キミは愛しい俺の恋人だった…!」
「どうして…だった、なんていうの…?」
まるでもう全て終わったかのように。
ダリウスの目は変わっていない。
ありのままの俺を愛してると言ってくれた時のままじゃないか、それなのにどうして…!
「本当は今も変わってない…俺は今もクリスのことを愛してるよ」
「……じゃあ…っ!」
「…だからこそ、もう終わりにしないと…だめなんだ」
「どうして!?」
「…こどもが出来た」
「え?」
「ケリーは、俺とのこどもを妊娠した」
……妊娠?
「…欲望に負けてクリスを裏切った、きっと神様はそんな俺を許せなかったんだ……あの時彼女の言葉を無視してきちんとコンドームを使っていれば……あぁいや、こんなことを今更言っても仕方ないな…全て俺が悪い、俺の無責任が生んだことだ…」
そうだ、この間教科書で見た…妊娠をやめることが出来る…確か、中絶というやつをすれば…
「中絶…すればいいよ、そしたらダリウスはぼくと一緒にいられる!」
ダリウスは言葉を荒らげた。
「中絶にはとてもリスクがあるんだ!そんなことをわかってて勧めることは俺には出来ない!…それにケリーも俺たちの両親も妊娠を喜んでる…そんな姿を見たらとても言えない。俺が…人生をかけてこの罪を償わなくちゃいけないんだ」
なんだ…それ、
「じゃあ…ぼくは…?」
「…クリス」
「ぼくはどうしたらいいの?ぼくはダリウスがいなくなったらひとりぼっちなんだ、家族にも友達にも…味方なんてどこにもいないんだよ…」
「…ごめん」
「ダリウス、キミはぼくと神様を裏切ってくれたんじゃなかったの?神様を裏切れるなら、そんな女や家族のことも裏切れるよね!?…お願い…ぼくと、一緒にいてよ!」
「……ごめん」