ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《クリスside》
家に辿りつくと、ダリウスは俺を下ろしてバタバタと走ってバスタオルを持ってきてくれた。
そのタオルからはダリウスの香りがして、落ち着くような落ち着かないような不思議な感覚だった。
「クリス、シャワーを浴びておいで、このままでは風邪を引いてしまう」
「…ありがとう、でもダリウスも服がびしょびしょ…」
「俺は大丈夫さ、あとでいい」
俺を抱きかかえていたダリウスも、シャツが濡れてしまっていた。俺のせいでダリウスまで…それが申し訳なくて、気付くととんでもない提案をしていた。
「じゃあ…一緒に」
ダリウスは一瞬目を丸くした後、俺の頭にポンと手を置くとあぁと頷いた。俺の心臓は爆発寸前だった。好きな人が目の前で服を脱いでいる。だんだんと顕になる程よく筋肉のついた大人の体から俺は目が離せなかった。
「あはは、そんなに見られると恥ずかしいな」
ダリウスはそう言って頭をかいた。
一緒に、と言ったは良いもののシャワー室は2人で使うには少し狭かった。自然とどこかしらが触れ合う状態になってしまう。ダリウスは特に変わった様子もなく優先的に俺の体に温かいシャワーを掛けてくれた。そしてお互いに体が温まった頃、シャワー室を出た。
ダリウスの貸してくれたシャツはとても大きくて、自分はまだまだ子供なのだという事実を突きつけられた。
ベッドをソファ代わりに座っていると、マグカップを2つ手にしたダリウスが隣に座った。
「どうぞ、ホットミルクでよかった?」
「あ、ありがとう…あったかい」
ダリウスの視線を感じる。俺がびしょ濡れで公園にいた理由を聞けずにいるのだとわかる。聞いて欲しい、俺のことを。全部全部知って欲しい。…でも、ダリウスにまであんな目を向けられたら俺は生きていけない。怖い…。
「クリス…?」
ダリウスの手が俺に触れた。そこで気付いた。自分の目から涙が溢れていたことに。
「……っ、あの…ね」
俺はその手の温かさに甘えて全てを話した。1度話し始めたら止まらなかった。ダリウスの顔を見ることなく俯きながら、涙を流しながら今までのことを全て話した。
そして最後に…
「おれ……ダリウスのことが、好き…なんだ」
ダリウスはそう言った俺の手からマグカップを優しく奪うとテーブルに置いた。
俺がダリウスの目を見つめると、ダリウスの目もまた俺を見つめていた。
