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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷


『…わたし、に?』

「そうだよ」

クリスはそう言って私のシャツのボタンを2つ外すとバッとはだけさせた。

『…っ!』

「これが消える前にまた遊んであげるって言ったの、忘れた?」

『……』

「ふふ、もう消えそうだけどまだ残ってる。…ねぇ、まさかとは思うけどアッシュはこれに気付いた?」

『…ううん』

「それは良かった。ちょっと試したんだ、2人が本当にそういう関係じゃないのかをね」

『え…?』

「アッシュがこれに気付いてたとしたら、少なくともお互いの前で裸になる関係ってことでしょ?…そんなの、俺許せないから」

クリスは私が思ってた以上にアスランのことが好きで、私がアスランの近くにいることが嫌で仕方ないんだ…。

近くにいたって…私がアスランに好きになってもらえるわけではないのに。

「…なに?その顔」

私は首を横に振った。

「……ほら」

クリスが指を指したのは床だった。

『…?』

「俺とお前が対等に話をするなんておかしいと思わない?…おすわり」

まるで犬に命令するかのようだ。

「……ねぇ聞こえないの?ユウコ、“おすわり”だよ」

私はゆっくり立ち上がり、指された位置に座った。

「…っふふ…いい子。首輪、リードにおすわり…最高!お似合いだよ。あーあ…人間のメス全員がこうやっていい子に言うこと聞いてくれたらあんな思いしないで済んだのにな」

クリスはスッと目を伏せた。その目には悲しみと怒りが同じ割合で見え隠れしていた。そういえば前に言っていたっけ…クリスは人間のメスが大嫌い、恨みがあるって。

今日のクリスはどこか前の彼と違う。冷たい目や、威圧的な物言いはしてくるけど前のように乱暴なことはしてこない。アスランと私に何もないってわかったから…?

「…俺さぁ、」

しばらく続いた沈黙にクリスの静かな声が響く。
私は様子を伺うような目にじっと見つめられていた。


「………ゲイなんだ」


私は一瞬、呆気にとられた。

ゲイって男の人を好きってことでしょ?
クリスはなんでそんなことをわざわざ今言ったんだろう。だって…クリスはアスランのことが好きだと言ってたんだから、彼がゲイなんてこと言われなくてもわかる。

クリスはそんな私の様子を見て、フッと漏らすように笑った。


「お前も…アッシュと一緒だ」


アスランと私が…一緒?
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