第9章 バースディ
家へと続く道を、2人、手を繋いで歩く。
8時をまわっても、あたりはまだ明るくて、人通りも多い。
「ゆめ、寒くない?」
「うん。平気。」
「ちょっとあの公園寄らない?」
日々人の指差す先には、初めてデートしたあの大きな公園があった。
「懐かしいね!うん。行こう!」
公園の中は、まだ明るいのに、もう電灯がついていた。
あの日2人で歩いた道を、もう一度ゆっくりと歩く。
さすがに公園の中は人もほとんどいなくて静かだ。
「あのときは、まだ雪があったよね。」
「うん。」
「今思ったら、あんな寒いのに、よくずっと座って喋ってたよね。」
「確かに。でも公園でたらバイバイだなって思ったら、なかなか帰れなかったんだよなー。」
「わたしも同じ気持ちだったなぁ。」
同じ気持ちでいてくれたんだ、と嬉しくなって日々人に抱きつきたくなる。
「…日々人、ぎゅってして。」
歩みを止めて抱きしめてくれる大きな手に安心して、わたしも思い切り抱きしめ返す。
ブラブラ歩いていたけど、ベンチを見つけて座る。
前から聞いてみたかったことを思い切って切り出してみる。
「あの、ね、日々人はわたしのどこを好きになったの?」
わたしは、ずっと憧れで、実際に会った日々人は、思ってたよりもずっとカッコよくて、優しくて、気づけば好きになっていた。
でも、日々人がわたしを好きになったきっかけは、聞いたことがなかった。
難しい顔をして、しばらく考えたあと、日々人が答える。
「最初は笑顔が可愛くて。
でも一番は一生懸命なとこ。
夢に対してもそうだし、いつでも一生懸命じゃん。ゆめは。
俺に対してもいつも、そうで。
そこが好き。
あっあと、すっぽり腕に収まるとこ。」
「えー、それちびってことじゃん。」
ちゃんと、わたしのこと、見てくれてるんだな。
予想以上に嬉しい答えに、つい茶化してしまう。
クスクス笑って日々人が腕の力を強める。
「そこがいいの。かわいいから。」
そう言って体を少し曲げて、耳に唇をつけて、ぎゅっと抱きしめる。