第8章 迷いの先にあるもの
手を優しく握られた感覚で目が覚める。
薄目を開けると、日々人の顔。
「あっごめん。起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫。お帰りなさい。」
「ゆめもお帰り。」
「ただいま。」
開けっぱなしのカーテンから覗いた外はすっかり暗くなっている。
「ごめん。ちょっと寝るつもりがずっと寝ちゃったみたい。」
起き上がろうとするわたしを日々人が止める。
「疲れてんだろ?もう明日までこのまま休めば?」
「んー、でもお腹空いた…。」
「あはは。オッケー。」
ベッドから抜け出しリビングに行くと灯りで目がしぱしぱする。
日々人がキッチンをガサゴソしてカップラーメンを出してくる。
「たまにはこれもアリだよな。」
「うん!久しぶりに食べるとおいしいよね。」
お湯を沸かして冷凍してたご飯でおにぎりを作ってラーメンと一緒に2人で食べる。
「ベルギーどうだった?」
「すっっっごい、楽しかった!
刺激がいっぱいあって、もう一度行きたいって思ったよ!
あとで写真見てね!いっぱい撮ったから!
「うん。」
喋りたいことがあり過ぎて話がまとまらないけど、可愛かった服、すごく綺麗なプレスの人、街並みの話、たくさん日々人に聞いてもらった。
お土産のチョコも一緒に食べて、時間はあっと言う間に過ぎてしまう。
伸びをして空になったコーヒーカップをシンクに運ぶ。
「冷えちゃったし、もう一回お風呂入ってから寝ようかな。」
「一緒に入る?」
日々人が意地悪な顔で聞いてくる。
少し考えて、「…入る。」と答える。
「えっ!?」
言った日々人の方がうろたえる。
「日々人が言ったんじゃん。嫌ならいいけど…。」
「嫌じゃない!入る!
けどなんで?いつもなら絶対イヤって言ってくるのに。」
「だって、ずっと日々人に会えなかったから少しでも一緒にいたいんだもん。」
顔が赤くなるのを感じる。恥ずかしくて日々人の目が見れない。
いきなりぎゅう、と抱きしめられる。
日々人の匂いに、温もりに胸が熱くなり、何もかもが満たされていく。
「なんでそんな可愛いこと言うの?
今夜はゆめも疲れてるから、我慢しようと思ってたのに…。」
耳元で言われて肌が粟立つ。
そのまま耳に、頬に、唇にキスが降ってくる。
深いキスに腰が砕けそうになるのを日々人に抱きとめられる。