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stride‼︎

第1章 出会いはいつも突然に


ディミトリーが後ろで1つに束ねた黒い癖っ毛を指で玩びながら私を見る。
さっきとは違い真剣な顔。

「…まだ、好きなのかまではわかりません。
でも、気になってます…。
昔、テレビで月に行った彼の特集を見て、すごくかっこいいなって思ったんです。
彼、月に降りたつ瞬間、ジャンプしてイエーイ!って言ったんです。
本当にこの人は月に行きたくて行きたくて仕方がなかったんだなってすごく伝わってきて…。
私も彼みたいに絶対夢を叶えたいってその時に思ったんです。
だから彼は私の原動力みたいな人で…。」

ディミトリーはカウンターに頬杖をつきながら、優しく微笑んで聞いてくれる。

「じゃあ彼は、ゆめにとってすごく大事な人なんだね。
また会えるといいね。」

「はい!」
私も自然に微笑み返す。

「あっ雪がまた降ってきたね。
ひどくなる前に帰ろうか。」

窓を見ると、昼間より大きな雪がぼたぼたと降っている。
私たちは外に出て店に鍵をかける。

「ディミトリーに話して自分の今の気持ちがよくわかりました。
昼間は偶然会えてテンションが上がっちゃって、気持ちがフワフワしてしまってたので…。
さすが、恋愛のプロフェッショナル!
ありがとうございます。」

ディミトリーがぷっと吹き出す。

「僕全然プロフェッショナルじゃないけどね。
一応人生の先輩だからね。
気持ちを整理できたのならよかったよ。」

「はい。
ディミトリーは今日はマルクさんのところですか?」
「うん。」
ディミトリーには2歳歳下のマルクという男性の恋人がいる。
いわゆるゲイだ。
休日の前日は、夜からいつも一緒に過ごすのが彼らの日課なのだ。
2人はとてもお似合いで、何度か会ったことがあるが本当に仲がいい。

「また明後日ね。
おやすみ、ゆめ。」
「お疲れ様でした。おやすみなさい。」

家が逆方向なので、それぞれ歩き出す。

キンと冷えた空気を胸一杯に吸い込んでみる。
火照った体には丁度いい。
携帯を見ると知らないメアドからメールが来ていて、どきりと胸が鳴る。

『仕事お疲れ様。
今日はかわいい服いっしょに選んでくれてありがとう。
あのあと渡しに行ったらすごく喜んでもらえました。
同じ日本人同士これからよろしく。

南波 日々人』

嬉しくて、何度も読み返す。
返信は帰ってからゆっくりしようと家路を急いだ。
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