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stride‼︎

第5章 火事


熱を計ると6度3分。
「おっ下がったね。よかったよかった。
じゃあお昼くらいからしんどくならなかったら、大家さんに電話してアパート行ってみる?」
「うん…。」
答えてすぐに、暗い空とゴウゴウ燃える炎の光景を思い出し、目の前が暗くなり少しフラついてしまう。

「ゆめ、大丈夫?」
日々人の声に我に帰る。
「あ、うん。大丈夫…。」
声が少し震えてしまう。
日々人がフワリとさっきよりも優しくわたしを抱きしめる。
背中を撫でられると不思議なくらい不安が和らいでいく。
「俺がいるから大丈夫だよ。」
「ん、ありがとう。」
日々人の胸におでこをつけて子供みたいにぎゅっと抱きつく。

「さ、飯食おう。
ゆめもしっかり食べて元気にならなきゃ。」
「うん。お腹空いた。」
ヘラリと笑うと、日々人も笑う。
「あはは、それでこそゆめ。」

準備を手伝おうとすると、熱あった人は大人しくしてる、と椅子に座らされる。
もう大丈夫なんだけどなぁと思いながらも、キッチンで働いてる日々人を見ていたくて、ありがたく待っていると、パンと温かい野菜スープと目玉焼きの朝食がはこばれてくる。
「わぁ、おいしそう!」
2人でいただきますをして食べ始める。
「昨日のおじやでも思ったけど、日々人ごはん上手だね。」
「一人暮らし長いからね。
つっても簡単なのしか作れないけど…。」
「十分だよ。おいしいし。」
「そう?よかった。」

しばらく2人、付いてたテレビのニュースを見るともなくごはんを食べていたけど、ふいに日々人が言う。
「ゆめ、やっぱりアパート行くの明日にしない?
どうなってるか気になるだろうけど、無理してまた体調崩したら本末転倒だし。」
「うん。日々人せっかくの休みなのに、なんかゴメンね。
ゆっくりできないよね。」
私が言うと、日々人がムッとした顔になる。
「俺はゆめと長く一緒に入れて嬉しいけど…。
ゆめは俺に遠慮しすぎ。
ドーンと頼ってくれた方が俺は嬉しい。
それとも俺じゃ頼りない?」
思いがけない言葉にブンブン頭をふる。
「そんなことない。頼り甲斐満載だよ、日々人は。」
「じゃあゴメンなんて言わない。」
びしぃっと鼻の頭に人差し指を突き刺されて、フッと笑ってしまう。
「うん。ありがとう。日々人。」
「うん。」
にっと日々人が笑う。


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