第4章 ムッタとヒビトとカイト
火曜日の夜。思っていたよりも遅くなってしまい、メールを送ってから走って駅の方に向かう。
パタンとドアを開け、日々人を探す。
カウンター席に見慣れた背中、と横にくるくる頭。
日々人の肩をぽんっとたたく。
「日々人!」
2人が振り向く。
「おっゆめ!お疲れ。
走ってきた?息上がってるじゃん。」
「うん、遅く、なっちゃったから…。」
ゆっくりでよかったのに、と日々人が笑う。
ハァハァ肩で息をしながら、
「あ、あの初めまして。
楢崎 ゆめです!」と自己紹介する。
「初めまして。
日々人の兄の南波 六太です。」
「ムッタさん…。」
「ムッちゃんでいいよ。ゆめ。」
「お前が言うな!」
パコっとムッタさんが日々人の後ろ頭を叩く。
「イテッ。」
日々人が口を尖らせてムッタさんを見る。
2人のやり取りに思わず笑ってしまう。
「ゆめちゃんも来たし、席テーブルに移ろうか。」
ムッタさんが飲み物と皿を持って立ち上がる。
「そうだね。」
そう言って、日々人もジョッキと皿を持って立ち上がり、みんなで近くのテーブルに移る。
「ゆめ何飲む?」
「じゃあ、ビール。」
他にもツマミを適当に追加して、来たビールで乾杯する。
走って乾いた喉に冷たいビールがしみる。
「おっゆめちゃんいい飲みっぷり!
お酒強いの?」
お酒でほんのり頰を染めたムッタさんが聞く。
「いや、普通くらい、かな?」
ポテトをつまみながら答える。
「そう言えば、ゆめとお酒飲むの、初めてだね。」
「確かに!そだね。」
「へえー。」
「まだ付き合って2週間くらいだもんね。」
「うん。」
見守るように、微笑ましそうに、ムッタさんが見てる。
お兄ちゃんて感じだなぁ。
「日々人と付き合ってると大変でしょ。
コイツ、なーんか抜けてるし、変なとこで面倒くさがるし。」
「ムッちゃんが細かいんだよ!」
2人のやりとりにクスクス笑う。
2人の昔話や、仕事の話をしながらお酒も進む。
フワフワ気持ちよくなって、何を話しても楽しくなってケラケラ笑ってしまう。
「誰だ、普通って言ったの…。
まだ1杯いってないでしょ。ゆめちゃん…。」
「…うん。弱すぎ。
ほら、ゆめ、もう水にしときな。」
「んー、大丈夫だってーぜんぜん…。」