第17章 ジョニー・ストーム(F4/MCUクロス)
後編
翌日のとある電子朝刊はやはり俺の名前でトップを飾っていた。予想に反して『痴漢を撃退』ではなく『痴漢の餌食』という見出しであった為、トニーを初めとした近しい人達に朝からコールを鳴らされ、驚くほど心配されてしまった。一人一人に丁寧な説明をしてなんとか納得してもらったが、こんな疲労から始まる朝は今日だけにして貰いたい。記者が事実を正確に描写していればこんな事にはならなかったのに。
誤った情報といえばもう一つ。『その場に居合わせた者の証言によれば』という掴みから始まる一文には『アベンジャーズのレイン・フリーマンはファンタスティック・フォーのヒューマン・トーチことジョニー・ストームに救われた』とある。確かに、彼に起こされた事で痴漢野郎から滅多な事をされなかったわけだが、実際にアイツを捕まえて駅員に引き渡したのは俺自身だ。多くの人間の興味を惹くよう脚色し、面白可笑しい部分だけを拾って記事にするなんて納得出来ない。何れ綻びが生まれるとは考えないのだろうか。
ましてや俺が痴漢ごときに抵抗せず、救われるのをただ待つような軟弱ヒーローだと思われたらどうしてくれる。キャプテン・アメリカのサイドキックとして認知されるようになった昨今において、俺を使役する側の彼にマイナスな印象が付くようなら許せない。
(……ああ、やはり)
社名を見るとデイリー・ビューグル社の文字。ゴシップで名を馳せる低俗な新聞社だ。いつでも独占的な特ダネを求める余りヒーローの写真を裏で違法に売買しているという噂がある。そんな風に会社側がプロ・アマ問わず積極的に情報を買い取る姿勢を見せているせいで、モラルもなく売り渡す人間が後を絶たないらしい。
その関係かどうかは定かでないが、過去にスティーブと共に外出した写真をデートと称して掲載されてしまい、売上に貢献してしまった事があった。回収を求めてS.H.I.E.L.D.から直々に連絡を入れて貰ったのだが『過去最高の刷行数なんだ、誰がそれを棒に振るか』と温情なく断られてしまった。それからすっかり彼らの事は苦手だ。
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