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星条旗のショアライン

第17章 ジョニー・ストーム(F4/MCUクロス)



(4)

内股のまま気を失った憐れな痴漢野郎を駅員に引き渡して一息付いていると背後から激しく肩を叩かれる。そう何度も杭みたいに打たれるようだと土に埋まっていきそう。
大方、大捕物を見た乗客の一人だろう。痴漢野郎は自らが所属するギャングの威を借りて小規模な揉め事や悪事を働く下っ端だったらしいので、それをよく知る近隣住民や、頻繁に電車を利用する者達からすれ違いざまに感謝の言葉を掛けられていた。必要以上に祭り上げる事は無いと言うと『謙遜するな』と笑顔でまた身体のどこかしらを叩かれたりして。
先程からこんな調子だから迷うことなく振り向いた。振り向いた先がキャップと黒縁眼鏡を身に付けたもう一人の捕まえたい男だったりしなければ、俺はそのまま民間人用の笑顔を顔に貼り付けていたに違いない。
「お前か」
「今の笑顔すげぇキュートだったのに。誰か分かった途端に随分だなぁ。しっかしさっきは凄かったよ。本当は俺が助けてやろうと思ってたんだけど、お前の倍以上ある身体の男を簡単にのしちまうなんてな!」
「それはどうも」
良く喋る男だ。俺が突慳貪な返事をし、踵を返して駅から出ようと歩き出しても、捲し立てながら人の波を掻き分けて何としても隣を歩こうと追い掛けてくる。
悔しい事に背丈は男の方が断然あったから構内で見失うという事が先ずないらしい。腕のリーチもあるせいか、一定以上の距離が開くと肩を引かれたり腰を掴まれたりしてなかなか振り切れない。今日の俺は気が短いんだ、いい加減にしてくれ。
「おい」
「お。やっと俺の方みてくれた」
「お前も駅員に痴漢として引き渡したって良いんだぞ」
「だとしてもその場で解放される自信がある。なんたって俺はファンタスティック・フォーだからな」
「ファンタス……なんだって?」
「……マジかよ、テレビとか新聞見ないの? 俺はファンタスティック・フォーのハンサム担当、ヒューマン・トーチだぜ?」
そう言って、キャップと眼鏡を外した男の顔を見た俺は腰を抜かすかというほど驚いた。外した後では『それで変装のつもりか』というくらい印象は変わらなかったが、だからこそ全く気付けずにいた自分に呆れもしたのだ。だってこいつ……――スティーブに顔がそっくりだ……!



後編に続く→
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