第6章 【番外編】休校の2日間
「奏!おはよう、待たせちゃった?」
「おはよう。全然、私も今来た所だから。」
約束の時間15分前に来た私だけどその5分後に集合場所にやって来た電気。やっぱり女の子をナンパするだけあってそういう女に気を回すのが上手い。チャラいけど。
「ところで、行き先まだ聞いてないんだけど。どこ行くの?」
「秘密!だから楽しみにしながら付いてきてよ。」
人差し指を口に沿え秘密のポーズを取る電気。悔しいけど顔がいいから照れてしまいそうになる。隠すように俯きながら「わかった」と返事をする。
移動の最中も私の私服やらいつもと少し違う髪形をしたのにも気付いて「かわいい」とか「似合ってる」とか色々褒めてくれる。そこまで慣れてんだこの男は!
「好きでもない女にそういうことばっかり言うと本気にされちゃうよ。」
「俺、案外本気で言ってんだけど。」
「馬鹿なこと言わないで。」
これだから軽薄な男は、って思ってしまうけどなんとなく満更でもない自分がいるから困る。けど、何かが引っかかって電気の言葉を疑ってしまう。
「あ、着いた着いた。ここだぜ。」
連れて来られたのは何とも品の良さそうなカフェ。モノクロアンティークで差し色に使われてる赤が自分の好きな配色そのものだった。
「奏とどこに行こうかなって、思って色々調べてこの店見つけたんだ。奏が好きそうだなって。」
「めっちゃ好き。有難う、私のために探してくれて。中入ろ?」
電気の手をとってぐいぐい引っ張りながら店の入り口へ向かう。楽しみにしていたのは自分だけじゃないっていうのと、私のために選んでくれたこと、私の好みをちゃっかり見抜いてくれたことが嬉しくて意図しなくても笑顔になってしまう。
「そんな急がなくてもなくなったりしねぇってば。」
「いーのいーの、お腹すいたの。」