第5章 うなれ体育祭
轟君が緑谷君にもう一歩距離を詰めるとまたその氷結を破壊した。その代償に緑谷君の左手は破損した。折れたとか、打撲したっていう色じゃない、自己犠牲が過ぎるよ緑谷君。
しかし、その返しも後退方向に氷柱を立て踏みとどまった轟君。マイク先生の通り、何かもうズルイ。
「どこ、見てるんだ!」
そのとき、ほんの間の瞬間。今まで攻撃を仕掛けていた轟君からではなく、緑谷君から攻撃仕掛けた。
「震えてるよ、轟君。“個性”だって身体能力の一つ。君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろう!?でも、それは左側を使えば解決できるんじゃない?
皆、本気でやってる。勝って、目標に近づくために、一番になるために!半分の力で勝つ?まだ僕は君に傷一つつけられてないぞ!
全力でかかって来い!」
左側だけ妙に震える轟君、アレが轟君の限度。その発せられた言葉にイラつきを隠せない轟君による正面衝突の最中、緑谷君は轟君に一発入れた。自分の指を全て犠牲にしてまで、この勝負にかける緑谷君の意思。何が一体彼を突き動かしているのか。
その後ももう一発轟君に入れた。このまま緑谷君の逆転で終わるかと思われた。
「君の!力じゃないか!!」
緑谷君の言葉の瞬間、大きな炎が花開いた。アレが、轟君の全力なんだ。アレが、本当の轟君。エンデヴァーの激励もよそにまた全力のぶつかり合い。でも、これ以上は緑谷君の体が持たない。リカバリーガールでも直しきれないものだってあるはずなんだ。
轟君の炎と氷、緑谷君の超パワーがぶつかり合う。中はもうどうなってるか解らない。とんでもない熱気と冷気が混ざって大爆発を起こす。その力の渦の中でも立つ一人の青年。
「緑谷君場外、轟君、3回戦進出!!」