第5章 うなれ体育祭
緑谷君の後の戦いはかなり一瞬で決着がついてしまった。
轟君の強力個性による大氷結。アレには本当に瀬呂君が可哀想でならない。ドンマイ、瀬呂君。
そして塩崎さんと電気の試合、調子にのった電気の一発フルパワーを抑えられあっけなく終了。だから電気はアホなんだ、2つの意味で。
「....行くか。」
大きく息を吸って、吐くと同時に呟いた。誰にも聞かれてないと思ってた声は切島君に聞かれていたようで、「おう!頑張って来い!」と背中を押された。頷いて返事を返して観覧席を後にした。
控え室に入り、落ち着くために座って目を閉じる。深呼吸を繰り返して、物音がしない部屋に溶け込む。外は何が何やら、あまり大きな歓声も聞こえない。完全に物音のしない、まるで別世界にいるような少し不思議な感覚だ。
「...失礼する。原操か、邪魔してすまない。」
「常闇君....。」
コンコン、と特有の乾いた音を合図に中に入ってきたのは私の次に戦う常闇君だった。お互い特別に話すような仲でもないので、会話はない。自分の戦いに集中しようとお互い気を使っているからかもしれない。
「原操選手、入場ゲートへお越しください。」
控え室に置いてあるスピーカから召集命令がかかる。最後の深呼吸をして控え室を後にしようと、ドアノブに手を掛けた。
「常闇君。」
「?なんだ。」
「私は、貴方にもヤオモモにも負けるつもりは無い。必ず貴方の弱点を暴いてみせる。その前に、この戦いで私の底力を、貴方に示すわ。」
「...楽しみにしている。俺も、こんな所で負けるつもりはない。お前の健闘を祈る。」
「有難う、行って来ます!」
常闇君の声援と、自らの決意を胸に、入場ゲートを潜って行く。