第5章 うなれ体育祭
「あ、いたいた。」
「へ?」
声を掛けられたと思い、見上げていた顔を下ろした。
「よっ、何か悩んでるみてぇだったけど、どうした?」
「瀬呂君、レクに出てたんじゃないの?」
「ああ、俺が出たのはもう終わったの。」
そっか、と返して言葉は途切れた。瀬呂君から視線をはずし、俯いた。すると、隣に何か暖かいものを感じた。
「何に悩んでんの?」
「決勝トーナメント、どう戦おうかっておもってさ。青山君の作戦はばっちりだけど、2回戦目のヤオモモと常闇君。ヤオモモは私と個性の相性悪いし、何より常闇君の弱点も開けそうで開けない。」
常闇君が爆豪君の攻撃を受けた後もあまり変わってない、電気の攻撃も個性で凌いだかもしれないけど、変わるのはその大きさのみ。そもそも大きさすらも伸縮自在というのもある。
「お前さ、そんな思いつめててもあんま変わんねぇぞ?肩の力入りすぎ、今ここでそんなやってても本番では思い通りに行かないことのほうが多いだろ?」
「...うん。」
負けてられないという焦り、焦りはミスに繋がりやすい。確かに今考えていてもしょうがないことかもしれない。攻撃が聞かないわけじゃない、100%完璧なんてこの世にはないのだから。
瀬呂君がぐっ、と背伸びしてベンチの背もたれにもたれ掛かった。
「にしてもここ、すっげぇ眠たくなるな。」
「確かに、寝ちゃいそうだね。」
同じように背もたれによりかかって空を見上げる。午前中確かに疲れていたのと、昼食後の満腹感でうつらうつらと意識が泳ぐ。
頬に刺す太陽の光、それに誘われるように瀬呂君の肩に寄りかかる様に、眠ってしまった。