第2章 胸はずむ
緑谷君が爆豪君を追いかけていったのを校舎の窓から2人を見守る。一方的に緑谷君が何かを喋った後、爆豪君が言い返しそのまま去って行ってしまった。ここからじゃはっきり見えるわけじゃないけど彼の目には涙が見えた。
お茶子が「男の因縁」って言ってたけど、あながち間違いではないのかもしれない。あの自分が絶対1番なんだっていう自己主張オーラをだして、誰が見てもわかる自尊心の塊。その彼が涙を浮かべてまで、口にする言葉を一体どんな物なんだろうか。
「私たちは、あまり首を突っ込める事じゃないんだろうね。」
そう言葉を口に出したとき、誰も言葉を発しない変わりに頷いて私に同意した。彼が自分の口から全てを話すなんて考え難いけど、爆豪君に信頼されるような人間になってみたいな。
「アタシらもそろそろ帰ろっか。」
「そうね、暗くなる前に帰りましょう。」
響香ちゃんが言葉を切り出すと梅雨ちゃんも頷き、みんなぞろぞろと帰り仕度を始める。私も帰ろうと教室へ戻ろうとする。
「いっっっ!!!」
慌てて口を塞いだ、これ以上声が出ないように。みんなは私に気付いた様子なく、足を止めた者はいなかった。取り敢えず教室に行くまでは耐えて歩くしかない。歩くために足首を動かすだけで関節を鳴らしたようなポキッ、て音と激痛。やせ我慢のし過ぎで額と背中には妙に冷たい汗が滲む。
また明日〜、とみんなが続々と帰っていく。荒くなりそうな息を必死に抑えてまたね〜、と手を振り返す。
「原操は帰らねぇの?」
「私はちょっと寄る所あるから後で帰るよ。」
「そっか、また明日な!」
切島君が顔の全部を使って笑顔で言ってくれるものだから不覚にもドキッ、とした。イケメンってずるい。私も笑って手を振って彼を見送った。
さて、保健室に行ってリカバリーガールに治せるか聞くか。