第2章 胸はずむ
い、痛い!この校舎の異様なほどの広さを忘れていた。教室から保健室まで案外遠い。膝は立っているだけの重圧にも異様に震えて、今にもこけてしまいそうなほど。壁に手をつきながら少しずつ、歩みをすすめるが、壁に手をつくのも歩くたびに足首をまげるのも、体重移動するのも、何をしても体中が激痛に見舞われる。私の個性ってすっごく便利ですっごく不便!
「あっ、」
派手にこけてしまって、膝の表面に別の痛みが生まれる。どうやら擦れてしまったようだ。早く立ち上がりたいのに、腕にも全然力が入らない。その前に疲れで寝てしまいそう、うーん、眠い。
「お、おい!大丈夫か!?」
肩を揺さぶられ激痛に顔を歪ませながら声のするほうへ向くと赤髪が見えた。
「きりしま、くん?」
「原操なんか、様子おかしかったから心配で戻ってきたんだ。待ってろよ、いまリカバリーガールのところにつれて行ってやるからな。」
さらっと、女の子が喜ぶ台詞を言ってから、これまた女の子が喜ぶお姫様抱っこをしてくれる。イケメンってこれが常なの?私死んでしまう、こんなの色々あって死んでしまう。
「私重いからいいよ!それに、」
「いいって、原操が気にするほど重たくねぇし。なんか、顔色も悪いな。急ごう。」
私を抱えながら走って保健室まで連れて行ってくれようとする切島君。ありがたい、非常にありがたい、だけど私が降ろしてほしい理由は他にあって、ですね。
「いっ!痛い痛い!急がなくていいから!ゆっくりでいいからあ!」
走られると振動の度に激痛が走る。痛さに耐えるため必死に切島君の首に腕をまわしてぎゅっ、と強く抱きしめる。しかし、それが彼の首を絞める結果となって、全速力で走って向かった。