第5章 あなたのためなら
夜の海にザザーンと波音が響く。
いつもは軽やかに聞こえる波の音が、
今日は重く、冷たく聞こえた。
波が月の光を受けて、鬱陶しい程に輝いている。
乾いた砂浜にぽとんと落ちた水滴は、
波からとんできた水しぶきだろうか。
“帰るとこないならこの船にいればいいじゃん!”
“おいリン。おめェは今日からこのハートの海賊団の一員だ。”
ずっと1人だった私に
手を差し伸べてくれたのは
ロー、そしてハートの海賊団のみんな。
出会った時から
当たり前のように過ぎてきた幸せな日々。
この時間が
私にとってどれほど大切なものだったのか。
今ではもうそれを確かめることすらできない。
そして私は
また1人になった。
でも、前とは違うところがある。
そう、きっと
この孤独は
あなたのための孤独でしょう?