第5章 あなたのためなら
「ローなにして…」
声を出そうとしたリンの口をその姿勢のまま塞いだ。
唇と唇は、お互いに惹かれ合うように、綺麗にくっついた。
今までなら、この感情が分からなかった。
言葉にならないのに、体の中で弾け、暴れ回るこの感情。
“ねぇキャプテン。本当は分かってるんじゃないの?……リンのこと、どう思ってるの?”
いつかベポが言っていたことが頭をよぎる。
ああ、分かってる。
リンのことが、好きだ。
この口を離したら、彼女はどこかへ行ってしまうのだろうか。
今日みたいに火拳屋の元へ行ってしまうのか。
勝手に船を出たことはもちろん説教行きのつもりだった。
しかしそれ以上に火拳屋とリンが一緒に居たということが腹立たしい。
分かってる。
リンと火拳屋を見て感じた、胸を締め付けられるような嫉妬も、
彼女を見て、異常な程に激しくなる鼓動も、
死を覚悟してまで、彼女を守りたくなったのも、
彼女が口にした“すき”が自分と違うことに苛立ちを覚えたのも、
全部、
彼女が好きだから。
なぜ、伝わらないのだろうか。
もっと頼ってほしい。
今、お前を苦しめているのは何なんだ。