第5章 あなたのためなら
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探しても、探してもリンはいなかった。
“スキャン”を何度かしてみたが、それでも見つからなかった。
頭の中で何かが起きたのではないかという恐怖が駆け巡る。
リンの能力を狙うやつに襲われたのか。
出会った時みたいに海軍に攫われたのか。
それとも―――。
今までだったら、1人の女にこんなにも執着することなんてありえなかった。
女には興味がなかった。
向こうから来ることはあったが、こっちから行くこともなかったし、行こうとも思わなかった。
なのに、リンという1人の女は、俺を狂わせた。
頭の中から離れなくなった。
いつも、気がついたら彼女を探していた。
「アイツどこ行きやがった…。ったく、手間かけさせやがって…」
ローは、刀を持ち直す。
ふと船の方を見ると、リンの姿があった。
思わずほっとため息が出る。
「おいリン…」
そう声をかけようとした先には、リンともう1人の男がいた。
「アイツは…火拳屋か…?」
なんでこんな所に火拳屋がいる?
なぜリンと一緒にいる?
まさか、一日中一緒にいたというのか?
リンとエースは声をあげて笑っていた。
エースはリンの頭を撫でた。
途端に何かがむくむくと溢れ出てくるのが分かった。
気がついた時には船に帰ってきていた。
「キャプテン!リンは…」
ベポの声にも答えず、ローはただ1人、部屋に籠った。