第5章 あなたのためなら
「今日はありがとね、エース。」
「おう!あとこれ…」
エースはリンにふわっと何かをかけた。
「えっ…なにこれ…?」
少しだぼっとしたパーカー。
フードにはうさぎの耳。
薄いピンク色で、ふわふわしている。
「街で買ったんだ。よかったら貰ってくれ。」
エースはまたいつものように人懐っこい笑顔を向けた。
「すごくかわいい!何から何まで本当にありがとう。じゃ、私も…」
エース。
私はあなたのことを友達って呼んでいいのかな。
こんなにも色んなことをして貰ったのに、こんなにも助けて貰ったのに、私は何も返せてない気がする。
だからせめて、これだけはさせてね。
勝手だけど、いつかはあなたの役にたつから―――。
リンはそっとエースの手首にブレスレットを付けた。
「それ…貰ってくれない?私の試作品だけど、しっかり効果はあるわ。」
エースの腕に刻まれている文字が、ブレスレットにも刻まれている。
「おれにか?トラファルガーの奴だけにあげるんじゃ…」
「エースにもあげたくなっただけよ。いつかは必ず…エースの助けになるわ。」
リンはにこっと微笑んだ。
「ばーか、おれがおまえなんかに助けられるかよ。まぁ、ありがとな。リン。」
エースはわしゃわしゃとリンの髪を触った。
陽はすでに、海の下に落ちようとしていた。