第5章 あなたのためなら
時は少しさかのぼり、今は昼間。
ハートの海賊団は丁度、船を停めた所だった。
「おいシャチ。リンはどこ行った。」
ローは額にしわを増やしてシャチに詰め寄った。
「リン?あれ、そういえばリンのことさっきから見てないな。ベポと遊んでるんじゃねェか?」
「ベポか。……許さねェ。」
ベポはこのクルーの中でもリンのお気に入り。
リンがベポにくっついている時、ローの顔がいつも以上に恐ろしいのは、誰が見ても分かる。
(全く…キャプテンも素直じゃないんだから。)
リンを探し回り、刀を抱えて甲板に向かうローを見て、シャチがため息をついたのは言うまでもない。
「おいベポ。リンを知らねェか。」
ベポは“リン”という名前にびくっと反応した。
「アイアイキャプテン…。えっと…リンはその……」
「何か知ってんのなら教えろ。」
可哀想なシロクマは、ローに睨まれ、俯いてしまった。
「キャプテン…リンは……もう街に行っちゃったんだ。」
「街だと!?どういうことだ…詳しく言え。」
「用事があるから先に街に行ってるって言ってたんだ。キャプテンには何か聞かれるまで言わないでって…」
ベポの声は、語尾に向かってどんどん小さくなっていった。
「チッ…勝手なことしやがって…!!」
刀を持って街へと走る。
リン…おまえは今どこにいる…?