第5章 あなたのためなら
その時頭の上に何かが触れた。
そう、エースだった。
「エース…?」
エースはリンの切り刻まれた傷を癒すように、そっと撫でている。
「抱え込むんじゃねーよ。トラファルガーの奴がおまえを1人でこんな所によこすとは思えない。アイツには言えないことなんだろ?おれに話してみろ。なんでも聞いてやるよ。だからもう…1人で抱え込むな。」
嵐の中に居た所を、突然道が開けた。
エースになら、話してもいいかな。
「エースって、なんだかお兄ちゃんみたい。」
何でも話せて、困っている時に助けてくれる優しいお兄ちゃん。
この感覚はなんだろうか。
目の前にいるその人は、優しさが滲み出ている、人懐っこい顔で笑っていた。
「そうかァ?ま、確かに弟はいるがな。」
弟さん…ルフィって言うんだっけ。
いつか会ってみたい。
きっと、エースのように―――。
「ちょっと…聞いてほしいの。」
リンは静かに目を閉じた。
ドラム島での出来事が頭の中で鮮やかに蘇る。
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