第5章 あなたのためなら
「なんだこれ!うめェ!!」
「よかった!エースはなんでもおいしいって言ってくれるから嬉しいな。」
エースはあっという間に作ったお菓子を食べ、いつの間にか皿には何も残っていなかった。
「あーうまかった。丁度腹へってたんだよなー。ありがとな、リン!」
エースは“ごちそうさま”と言い、にかっと笑った。
「エースはこの島の後、どこへ行くの?」
「……リン。黒ひげを知っているか?」
エースはまっすぐ前を見つめていた。
「黒ひげ…“マーシャル・D・ティーチ”のことね。彼は元々、エースと仲間だったんでしょう?」
詳しくは知らないが、新聞に載っていたのをちらっと見たことがある。
「ああ、そうだ。アイツは白ひげ海賊団で“仲間殺し”の罪を犯した。」
「仲間殺し?黒ひげは仲間を殺したの?」
「サッチっていう奴を殺したんだ。サッチの持ってた“ヤミヤミの実”を奪うためにな。」
仲間殺し。
ハートの海賊団では想像も出来ないことだ。
たとえ奪いたいものがあったとしても、クルー達が仲間を殺すなんてことはありえないだろう。
「ばーか。そんな暗い顔すんなよー?とにかくおれは、黒ひげを追わなきゃなんねェんだ。それで、絶対アイツを倒してやるんだ。」
エースはリンの頬をぐにっとつねった。
「だって…仲間殺しなんて、酷い。仲間なんでしょ?なんで大事な仲間を殺せるの…」
酷い。
仲間は大切なものではないのだろうか。
私にはあの人達を殺すことなんて絶対に出来ない。
――たとえ自分の命にかえても。
「リンの海賊団、仲良さそうだもんな。ティーチみたいな奴いないだろ?そういや、おめェらは次どこの島行くんだ?」
次…?
体が奮い立つのが分かる。
暗闇の底に押し込めたいた感情が泉のようにじわじわと湧き出てくる。
私の身体には、ざくさくと斬るような痛みがはしった。