第1章 二年一組
「ごめんね、先生に画材の買い足し相談してきてくれないかな?」
「了解しました」
罪悪感はあったけど、私は部室にいた先輩の頼みにぶっきらぼうに応答して部屋を出た。
*
慣れた。
言ってしまえばなんだか虚しいけど、実際に先輩から頼み事をされる事が多く、こんな風に校内を歩き回ることも日常となった。
私が所属している美術部に三年生は居らず、二年生四人と、一年生は私を含めて二人の合計六人というかなりの小規模の中、私は半ば強引に副部長として活動している。
任されたことが嫌なわけではなく、むしろ初めは一年生の段階で大きな役目をもらえた事が素直に嬉しかった。
六人しかいなくても一人一人部活に取り組む姿勢は熱心で、その分作品を作っているとどうしてもその場を離れたくなくなるのは人間の本能だと思う。
特に、二年生は皆彫刻を専攻しており私個人の意見では、絵画よりも彫刻は一度期間が空いてしまうと手を出しづらくなってしまう。作りたいイメージがまとまらなくなる。
そうやって悩んでいる場面でいつも私は、いわゆる雑用をやることになっているのだ。
部長には任せづらい、だからと言って部員に頼んでも部長や副部長にしか分からない事がある。
要約すれば使い回し安い人。
頼まれても私は一切反抗的な態度を取ったことがない。取ったとして部活内が悪い雰囲気になるのは嫌だし、先輩や仲良くなれた同い年の子に幻滅されるのも嫌だ。
嫌われて絵を描けなくなるなら、大人しく雑用をこなしていた方がまだ辛くないや。
そんな風にして強がりながら、弱虫な私は自分の気持ちを騙して、騙して、美術部を続けている。