第8章 タイムリミットとクローバー
『ぁ…、ご、ごめんなさ……ち、ちょっと私、あの…ぶ、武器庫の整理にでも行ってくるから…!!』
「っと待て、逃がすか。お前の仕事じゃねえだろそれ」
『!!?離し「立原に聞いたぞ、お前体調崩して飯まともに食えてねえんだろ」…立原君が?』
「戻したって聞いたからな。どうせ暫く仕事無いなら、ちょっと付き合え…体にいいもん作ってやるよ」
ぶわ、と目に涙を溜めて潤ませるそいつは、何を思っているのだろうか。
『……い、いらない』
「そうか、断るんなら俺が折角作る料理を食べて貰えなくなっちまうな」
『!?じ、自分で食べればいいじゃな「俺もうたらふく食ったし。首領にもらった弁当」!!!』
勢いが止む。
それから、恐る恐るというように、彼女は俺の方を向かずにもじもじしながら質問するのだが。
『…お、お弁当…ですか、?』
「ああ。重箱十五段もある馬鹿みたいな量のやつ…多分三食分だろうけどあれは。とりあえず上の五段ついさっき食べたところだ」
『へ、へえ…そうなんですか』
お前それは…わかり易すぎないか少し。
そんなあからさまに照れてちゃやりにくいぞこっちも。
「腹一杯に美味いもん食ったから今ならいいもん作れるぜ俺、めちゃくちゃ気分いいから」
『!?そ、そう…??お、美味しかったんだその…お弁当とやら』
すんげぇ嬉しそう。
うわ、何こいつこんな顔すんのかよ。
まるで恋する乙女そのもの…っていや待て、そうだったこいつ俺の…
「あんな料理作れる奴そうそういねえだろってくらいにはな」
『へ、へえ…』
ものっすごい口元緩んでるし。
目ぇ合わせてくれねえけど頬まで紅くさせてっし。
「特にあの卵焼きはしびれたな」
『……お、お弁当は分かった、けどあの…そ、その…ご飯、??ほんとに作ってくれるんです…か…?』
食いついてきた。
なんだよお前、食いたかったんならそう言えばいいのに素直じゃねえな。
素直になれねえのも俺のせいかもしれねえけど。
「!そりゃ勿論。何が食べたい」
『…何でも』
「じゃあまあ、つまみでも作りながら美味いもん作ってやるよ。ロールキャベツとか」
『だ、大好き…』
覚えた。
即座にインプットした。
「スープは何派?」
『何でも、』
「じゃあ和風にしようか」
嬉しそうな様子のお嬢さんに、手を差し出す。
「エスコートしますよ」
