第8章 タイムリミットとクローバー
「あーあー、こんな青くしちまって…何したんだよ?食堂でそんな怪我してなかったろ」
『…ソファーで寝転んでたら落ちた』
「ソファーからって、またなんでそんな…」
『呼ばれた、から』
呼ばれたって…俺だな恐らく。
もしかしてあれでビビって慌てて落ちたってことか?
えっ、そんなことすんのこいつ?
氷嚢を用意して、氷水を入れて幹部に当ててやると、どこか気恥しそうにして目を逸らすそいつは初見の頃とはまるで別人のようだ。
誰だこいつは、頼むからそれ以上可愛らしいことすんなお前。
……っていや、待て、流石に現金すぎるだろ俺!!
自分が元々こいつの恋人だったからって知っただけだ、そんな下心で動いてちゃそれこそこいつに失礼だろうが。
しばらく冷やしているうちに塗るタイプの湿布薬と、それを日光から守るためにガーゼを挟んで包帯を巻く。
少々大掛かりな気はするが、肌がやられるよりいいだろう。
せっかく綺麗な肌してんのに勿体ねぇ。
『…、……』
なんて見とれかけていて気が付かなかったが、白縹の様子がおかしくて、様子を伺ってみるとうつらうつらと船を扱きかけている。
そういえば、俺が目覚めた時もこいつがすぐそばに居てくれて…手なんか握っちまって、まあ餓鬼らしいところも……
いや、違う。
そうじゃない、違うだろ。
俺が汚濁を使って倒れちまったから、傍にいてくれたんじゃないのか、こいつは。
俺を想ってくれているから、あんな風に指を絡めて、手を握っていたんじゃないのか。
不安で不安で仕方がなかったんじゃないのか。
それが、目覚めたらこんな仕打ちだなんて…そりゃ、気ぃ張ってたっておかしくない話で。
「…寝るならベッド使え、また床に落ちんぞ」
『え……うん、…』
「っと、…!!?!?」
寝ぼけたような声と共に立ち上がったかと思えばフラリと崩れそうになったので、それを支えればぎゅぅ、と腕を回して抱きついてきやがった。
待て、待て待て待て、まだこっちは心の準備が何ひとつとしてできてな___
『ぐぅ。』
「……ですよね」
ラッキーなスケベを期待した俺の煩悩が受けた報いは相応のものだった。
ざまあみやがれ、当然の結果だ。
…いやしかし、少し話してただけだぞ。
それもほとんど無言だったし。
それで寝るって、一体そんなことにどれだけ安心したらこんな…?
