第8章 タイムリミットとクローバー
外が明るくなってきた頃、彼の意識を感じて一足早く目を覚ます。
指を絡めて握っている手がぴく、と段々かんかくをとりもどしてきたようで、唸るようにんん、と喉を鳴らして寝起きの感覚に嫌がって。
可愛い。
「っ、てぇ…今何時…で、……あ、?」
『…おはようございます』
朧気に、寝起きの目でこちらを向いて、いつの間にか自分の手を握ったまま起きるのを待っていた女を目の前にして、その目をぱちくりさせる。
「お、おう…ってここ、医務室?…ああそうか、俺昨日汚濁を…っ、?おい、手…」
言われるがままに、困惑させていたらしいので離して、そのまま首領を呼ぶと医務室側の彼の私室から出てきてくれる。
「ああ、目覚めた?元気でしょ、そんなに心配しなくてもいいって言ったのに」
「首領…すみません、結構寝てしまってたみたいで」
「ああ、いいんだいいんだ。君には重役を果たしてもらったばかりだから。ゆっくり休んでくれていいよ」
ちらちらとこちらを見ながら、ソワソワする様子に恐らく森さんも気付いているのだろう。
「…あの、すみません首領。その…自分、目が覚めたらこいつの手握ったままで……俺が連れてきました、?この子供」
『大して身長変わんない相手に子供とかウケる』
「なんつった手前」
「はいはい、落ち着いて中也君。紹介しなかったっけ?」
「されてません、しかも初対面からこんなに失礼なクソ生意気な餓鬼………首領?まさかどこかから無理矢理攫ってきたんじゃないですよね」
「私の守備範囲は十二歳以下だよ、覚えていてね。そしてこの子は準幹部兼作戦参謀長の白縹 リアちゃんだ。可愛いだろう?♡」
煽ったのもあって、嫌そうな顔でこちらをじろりと見やる彼。
「…女子供だからって甘い目で見過ぎでは?というよりこんな時期にいきなり準幹部と作戦参謀長とか」
「ちなみに中也君の直属の部下だから」
「このクソ生意気なのがですか!!?」
『うるっさいわねさっきから、もうちょっと大人な対応してくれる人ならこんな態度とりませんてクソ幹部』
「誰がクソ幹部だコラ、いっぺん表出ろ手前!?」
まあまあまあ落ち着いて!
なんとかその場を収めるのが森さんの役目。
そう、この男、私の事だけをキレイさっぱりその頭の中の記憶から抜け落ちさせていやがるのだ。
というのも、バクに食べられてしまったのだが。
