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glorious time

第8章 タイムリミットとクローバー


拠点に戻って、医務室で森さんに預け、一度彼の執務室に戻って整理していく。
それから彼が目を覚まして仕事に復帰するまでの間の書類を全て作成し、Qちゃんの奪還作戦の報告書と、これから終局に向けての参戦案と…

あとなんだっけ。
…あ、そうだ、早くここ引き上げなくちゃいけない。

私物の確認をしている最中、執務室の扉がノックされる。
相手を悟れば森さんが来ていて、どうぞ、と返事すればあちらから開けて入ってきてくれた。

「…お疲れ様」

『何もしてないですよ、私…とりあえず、執務室移りますから』

「そのままいたらいいじゃない」

『…不自然でしょ、幹部と同じ執務室を使ってる新入りなんて』

練習がてら、笑ってみた。
すると困ったように、なんとか彼も微笑み返してくれて、本来私のいるはずだった執務室へと案内される。

そもそも私物などを置いてはいなかったため、写したのは仕事用の事務用品やパソコンくらいのものだが。

「とりあえず、君は日が出るまで拠点から出ないように。妖館程じゃあないけれど、妖怪用のセキュリティシステムと結界があるだけ外に出るよりいいだろう」

『…厨房使いたい。中也さんね、お弁当食べるの好きなんだって』

「そう、それなら好きなように使ってよ。ちなみに僕も少し食べてみたいなぁ、リアちゃんの手料理」

『じゃあ森さんにも味見させたげる』

「うん、じゃあ行こうか…って、何そのぬいぐるみ?朝も連れて……ああ、よく出来てるねぇ」

『あげないわよ』

「ははっ、分かってるよ。さあ、行こうか」

手を差し出されるのにどうしようもなく縋り付きたくなって、自分の手を重ね、ついて行く。
それから、また多すぎるだろって突っ込まれそうな量のお弁当を重箱に詰めて、森さんにも味見してもらって、褒めてもらって。

不味くはなさそうだし。
いつもとあんまり出来も変わらないし、多分大丈夫。

だから、それをまた包んで首領に預けてから、中也さんの眠っている寝台に訪れて、椅子に腰掛ける。
この人、確かこの前私が目覚めるまで一緒にいてくれたんだっけ。

服を着替えもせずに、仕事着のまま。

彼の真似事をするように、布団の上から彼の胸元に耳を当てる。

ちゃんと聴こえる。
呼吸の音に、心臓の鼓動…それに鼾。

元気だ。

もう一度手を握るとその体温に安心して、そのまま私も意識を沈めていった。
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