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glorious time

第2章 桜の前


携帯、と思って画面を見るもそれは圏外になっていた。

「おいっ、お前…!!なんだよこれは!!?」

声は、届いている。
あれ…そこに、いるの?

『…塗り壁。攻撃的な妖怪じゃあないから安心して、朝までこうやって私が隔離されてれば勝手に帰っていくから』

「朝まで隔離って!!お前まさか本気で朝までそこにいるつもりじゃねぇだろうな!?」

『あー、じゃあいいよ。中原さん先帰ってて?私の部屋使ってくれていいから、貴方はちゃんとしたところで____』

言いきれなかった。
意思が強すぎて、無意識に拾ってしまった。

その人からの怒りを。

「…っ、ざっけんなよ手前…ッ!!!俺が手前見捨てて平気な顔して帰れるとでも思ってんのか!!」

ドン、ドン、と壁から振動が伝わる。
…まさかこの人、塗り壁を殴ってる…?

「んな陳腐な覚悟で手前のシークレットサービス名乗り出てねぇんだよこっちは!!!首領命令に勝手に独断で違反してまでやってんだぞ!!!」

『……何それ。それなら私が話を通しておくから、貴方は普通にちゃんとした生活を…したら、いいじゃない』

「手前読めるくせしてまだ分かってねぇのか!!!?ッ、…この壁ぶっ壊す、離れとけ!!!」

今の今まで、素手だったのか…?
嘘でしょ、この人なんで私なんかを出すためにそんなこと。

「異能力ぶっ放してぶち破るから離れろっつってんだ、怪我したらどうすんだよ!!」

『!!!、…は、はい…!』

言われた通りに、背を壁につけるように端まで移動する。
しかし、それがいけなかったのだろうか。

攻撃的でないはずの塗り壁から、意思を持った腕が生えたかのようにして、私の体が壁に押さえられ、口を塞がれる。

『ん、…ッ…!!?』

腕や脚が物凄い力で押さえ付けられて、段々首もしまってきた。
あ、やばいこれ…息、できな__

「____ッ、“リア”!!!!!」

飛び込んできた、その人。
視界も奪われていたはずなのに…文字通り、言った通りに、ぶっ壊してしまってくれた。

壁に取り込まれそうになっていた私を無理矢理引き抜いて、受け止めて…塗り壁の急所を攻撃すれば、塗り壁は倒れて消滅する。

『…、……中原、さ…』

軽々と横抱きにされていれば、無性にすがりつきたくなって、無意識に必死で抱きついていた。

「…阿呆……死にかけてんじゃねぇよ」
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