第2章 桜の前
一通り、何故だか私の回りたいところを無理矢理聞き出されて連れ回されて、夕方頃になる。
もしかしてこれは、なんとなくだけれど、私の行きたいところを堪能させてやろうという心遣いだったのだろうか。
そんなことを思ってしまうくらいには、中原さんは私をなんやかんやと言いくるめていろんな場所へ連れていってくれた。
聴かないようにしていたから分からなかっただけで、軽く(かなり強引ではあったが)エスコートしてくれていたのかな、なんて思ったり。
時計を見て、時刻的にもそろそろ戻った方がいいかと判断する。
のだが、丁度いいタイミングで中原さんの携帯に電話がかかってきたらしい。
「!…ああ、悪い。反ノ塚からだ、少し出る」
連勝から…ああそうか、先に連絡先交換してたんだこの人達。
携帯って本当に便利なのね。
「あ?らカルタ…って誰だ?シークレットサービス??……おう?」
カルタに何か、あったのだろうか。
私と同い年の、女の子のシークレットサービスである髏々宮カルタ。
一見不思議な性格に見えるのだが、マイペースで芯が強いと言うに限ると私は見ている。
妖館の中でも比較的仲のいい方…ではあると思うのだけれど。
「まだ帰ってなくて捜索中って…分かった、じゃあこっちも少し探してみるわ。見つけたら連絡する」
だいたい何があったのか察しは着いた。
買い出しか何かに行って、それっきり帰ってこないのだろう。
そう考えると、彼女の行き先は手に取るようにわかるものだけれど…困ったことに私のパートナーさんにそれを悟られるわけにはいかない。
カルタの今いるであろう場所まで連れて行ってしまえば、折角私が外にいる意味が無くなってしまう。
それにカルタだって馬鹿じゃあない、純血の妖怪が現れるような時間には妖館に戻るよう考えているはずだ。
「お前、髏々宮って奴の行きそうな場所知ってっか?」
『あの子マイペースだからなぁ…野良猫追いかけて公園行ったとか、豆狸追いかけて学校行ったとか?めちゃくちゃ有り得そう』
「ね、猫に狸って…どんな奴だよ」
若干引いたような中原さん。
あれ、意外、そんな反応見せるんだ。
『とりあえず妖館に向けて戻りながら考えてみようよ』
「…それもそうか、お前も危ねぇんだったなこれからの時間は」
『別に。私は…慣れてるから』