第8章 セブタン島
「だ、ダメだよ……」
白い頬をピンク色に紅潮させて、はそっとローを押し戻そうとした。
「船から下りたくない……」
「何でもするって言ってくれただろ。が俺をどう思ってるか聞かせてほしい」
泣き出しそうな顔で、は首を振った。
「言えない。言ったら船から下りなきゃいけなくなっちゃう……」
クルー同士の恋愛禁止を命じたのは船長であるローだった。公然とクルーがを追い回すのを避けるため、告白されたら自分の気持ちと関係なく、それが身を護る唯一の手段だと思い込んで体を触らせてしまうを守るために必要なルール。
それを言い出した時は、自分が最初に破ることになるとは思っていなかった。
「……海賊なのにバカ正直にルールを守る気なのか。は真面目だな」
からかって笑うと、「え、え!?」とは納得行かない声を上げた。
「キャプテンがあんなに怒ったのに……」
「船長は鬼にならなきゃいけない時があるんだよ」
「船長じゃないキャプテンは?」
「バレなきゃいいだろ」
ものすごいショックを受けては固まった。笑ってローはそんなの頬にキスする。
「だから聞かせてくれ」
「……今は言いたくない」
すっかりはヘソを曲げてしまった。目尻やこめかみにキスしながら、「なんでもするって言ってくれただろ」とローは交渉を試みる。
「ミニベポ貸してあげるので帳消し」
「こんなのいるか」
拒否してもう一度キスしようとしたら、顔にぬいぐるみを押し当てられた。そのまま拒むようにぐいぐい押されて、ローはお気に入りのぬいぐるみをベッドの方へ投げ捨てる。
「ミニベポ投げた!」
「邪魔だったからな」
これで邪魔者はいなくなったと、診察台に座るを壁際に追い詰める。真っ赤になっては憤った。
「……っ、キャプテンずるいよ!」
「海賊だからな。欲しいものを手に入れるためなら何でもする」
手の届く場所に宝があるのに、我慢できるわけがない。