第8章 セブタン島
「見せろ!! 何やってんだ、指が落ちるところだぞ……っ」
「うー……キャプテン、私の指なくなっちゃう?」
痛みにぽろぽろと泣きながら、は不安そうに尋ねた。
幸い切断されてはいないとはいえ、傷口は深い。ハンカチできつく縛って止血し、とにかく一刻も早く手当ができる場所へ行こうと、ローはを抱きかかえて、しつこく追いかけてくる海軍から全力で逃げた。
「すぐに船に戻って手当してやる。必ず治してやるから。痛いだろ、ちょっとだけ我慢しろ」
「うん……」
の治療が最優先だ。
だから一時、残酷な真実のことは考えずにいられた。
◇◆◇
「大佐、指示を……」
部下に話しかけられ、呆然と座り込んでいたロッティは意識を取り戻した。
「ああ、ええ、そうね……」
立ち上がり、仕事をしなければと思うのに、何をするべきか考えられない。
トラファルガー・ローを捕まえ、問い詰めればロシーの死の真相がわかるかもしれない。それは待ち望んでいたことのはずなのに、いざ手がかりが目の前に現れると怖くてたまらなかった。
「ツバメ君? 顔色が真っ青よ……」
今にも倒れ込んでしまいそうな部下の様子に、ロッティは彼を気遣って声を掛けた。
「おとなしくしていて欲しかっただけなのに……まさかあんな行動に出るなんて」
盲目の少女の血で汚れた自分の両手を、ツバメは呆然と見る。傷つけるつもりはなかったのに、とても無事ではすまないだろう出血にツバメは愕然とした。
震えるその両手を包み込んで、海賊たちに恐れられる海軍本部の静寂のモアは「大丈夫よ」と言い聞かせた。
「わかってるから」
何か言わなければと思うのに、ツバメは言葉が詰まって何も出てこなかった。自分こそ彼女を気遣わなければいけないのに、思いつくものと言ったら憎まれ口ばかりで。