第8章 セブタン島
ローはとっさにを連れて、能力で退避を図る。何も見えてないは危機に気づいていない。
猶予は短く、遠くに逃げることはできなかった。抱き込むようにをかばい、地面に伏せた瞬間、音もなく手榴弾は爆発した。
「!? ……っ!? ……!!」
突然の爆風にはパニックを起こした。大丈夫だからと言おうとして、声が消えることに気づく。
(なんで……っ)
この能力を知っている。どんな音も消してしまう、無音を操る悪魔の実。
『安眠において俺の右に出るものはいない』と豪語していた、彼の能力。懐かしくて悲しい、彼の死とともに失われたはずの――。
(……そうか。だから『静寂』か)
の手を叩いてトンツーで手榴弾が爆発したことを伝えながら、ローの頭は冷静に思考をしていた。
だがその女の姿を見た瞬間、ローは我を忘れて刀を抜き、飛びかかっていた。
「その能力、どこで手に入れた!?」
静寂のモア――海軍本部のモア・ロッティ大佐は、銃剣のついた散弾銃でローの攻撃を受け止めた。
怪訝な顔で、彼女はローを見る。
「この能力は形見よ。あなた……ナギナギの実を知ってるの?」
銃口がローを向き、音のない散弾がほとばしる。ナギナギの実によって音を消された銃撃。違和感に足を止めた瞬間、狙い撃ちにされてしまう。
「キャ、キャプテン……っ」
か細い声に振り返ると、が少尉の階級章をつけた海兵――ツバメにナイフを突きつけられていた。
「……!」
「動かないで。暴れると首から全身の血が吹き出して死んでしまいますよ」
ローではなく、に向かってツバメは優しいとも言える口調で言い聞かせた。
「海軍のやることか!?」
「海賊が人道を語るものじゃないわ」
冷酷な笑みを浮かべてモアは銃剣をローに突きつける。