第8章 セブタン島
「ヒューマンショップから逃亡したという男、例の海賊にそっくりなんですが」
「やっぱりビーチで捕縛しとくべきだったかしらねぇ。休日だったし、皆殺しにした後じゃさすがにバーベキュー食べる気分じゃなくなると思って見逃したのが間違いだったのかも」
「……あのとき僕らが捕まえておけば、被害は防げたんでしょうか」
「悪いやつじゃなさそうで、どうせまたセイロウ島のウソツキ准将が自分のミスを隠すために罪状をでっち上げたんだろうと判断した私の責任よ。次に見つけたら見逃されたことを後悔するくらい細かく刻んで反省させてやるわ」
(おいおい……)
濡れ衣で刻まれたらたまったものではない。青い顔で会話を伝えたを連れて、ローはこの場を離れようとした。
「爆弾魔だー!!」
ローを指さして叫んだのは島の住人らしき子供だった。昨日逃げるときに何人かには顔を見られている。いくら変装しているとはいえ、勘の鋭い子供なら見抜いてもおかしくはなかった。
「そこのカップル、とまれ!!」
を連れて、ローは海軍の制止を振り切った。
「掴まれ、」
「わっ」
を抱きかかえて能力で一気に移動し、追ってくる海軍をかいくぐる。
(安易に現場に戻るべきじゃなかった……)
反省はあるが、大きな収穫もあった。まさかビーチで会ったあの女が海軍だったとは。
少なくとも次に会った時は警戒できる。
「キャプテン、何か変……」
ローに抱えられたが、いつになく不安な様子でぎゅっと服を掴んだ。
追っ手をまいて、二人は人けのない海岸に来ていた。切り立った岩場が多く、遊泳には向かないせいか、付近に人の気配はない。
を下ろしてローは尋ねた。
「変って何が?」
「よくわからない。音が……」
違和感の正体をつかもうと、はさらに耳を澄ませて集中する。そしてハッとして顔を上げた。
「音が一部だけ消えてる」
その瞬間、黒い小さな物体が投げ込まれた。ピンの抜かれた手榴弾だった。