第8章 セブタン島
「シチューができたぞー! 皿は各自!」
「アイアイ! わーいおいしそう~」
おにぎりパーティに興じながら、こそっとはローのそばに寄ってきた。
「キャプテン、ヒューマンショップに行ってたの?」
「まあな。でも爆破したのは俺じゃない」
「誰を買うつもりだったの? 女の人?」
大丈夫内緒にするよと言わんばかりのキラキラ笑顔を向けられて、ローは「違う!」と全力で否定した。
59.静寂のモア
翌日。朝からローはを伴って、現場へ戻った。
お気に入りのぬいぐるみを持ってきたは「ミニベポ初めてのお出かけだね~」と上機嫌だ。
一応変装もしているが、少なくともを連れていれば爆弾犯には見えないだろう。
案の定、ヒューマンショップの爆発現場には大勢の海軍が捜査をするために集まっていた。
野次馬にまじって近づきながら、ローは「何か聞こえるか?」とにささやく。
「ええと……あ。ロッティとツバメ君の声がするよ」
耳を澄ませていたが、あいさつしようと身を乗り出す。だが彼らが海軍の制服を着ていることに気づいて、ローはを押し留めた。
「モア大佐、やはり手がかりは何も」
「困ったわねー。天竜人からも執事が爆破されたから犯人見つけろってせっつかれてるのに。うちのツバメ少尉は執事としてはイマイチだけど、天竜人の執事なんて世界で一番優秀じゃないと務まらないんでしょうね。交換してほしいわ」
「僕は! 執事じゃ! ありません!」
から二人のやりとりを聞き、ローは驚愕した。
(あいつが静寂のモア……!?)
薬師アルゴールから聞かされるまでもなく、ローも新聞などでその逸話については聞き及んでいた。
ほとんど捕縛をしない将校で、罠にはめられ首を刈られた海賊も数多いと。
(海で会ったのも偶然じゃなかったのか? 俺の顔を知ってて近づいてきた……?)
海賊は懸賞金がかけられると同時に手配書に顔が載るが、海軍はよほどの広報役でない限り、家族への危害を恐れて顔が出ることはほとんどない。
向こうがローとわからずに偶然近づいてきた線は薄いだろう。