第3章 愛運の結びまで
そして、信長は、、、
天守の張り出しの手摺に腰掛け、夜の安土城下の方に顔を向けたまま、どこを見るともなく、ただ一つ思う事、、、
やはり、あの時のこと。
秀吉の言葉は間違ってはいないのだ、、、。
至極当たり前の事を言っているのだ。
それは、信長自身も思っては、いる事。だから、余計に
茉莉花以外の女子であれば、何も考える事なく、あの手の輩を撃退する事など、赤子の手を捻りあげるのと同じ事。
ここまで、心を悩ますことも無いのだが、、、、
こと、茉莉花のことになれば、信長自身それで良かったのか考えることもあった。
それは、信長が自分で実感しているよりも、ずっと心の奥底から茉莉花を大切に思っているのと同時に、失う事の恐ろしさから来るものであった。
今まで、誰に対してもこの様に考えることも、感じる事も無かった信長だが、帰城したときに秀吉に言われた言葉が、胸の奥に重く大きく残っていたのだ。
だから、茉莉花に先に休めと言い、側から離したのには、自分の中にある何かを見極める為であるようだった。
いや、そう言いながらも、信長自身は、既に分かっているのだ。
確かに、あの時、迷わず刀を茉莉花に渡したが、、、、、。
それは、己の過信か茉莉花への信頼からなのか、、、何なのか、、、。
あの時、確かにあの場を切り抜けるためには茉莉花に太刀を渡す事が最善と思ったことは間違いない。
だが、茉莉花が万が一にも自分の身を守れなかった場合、、、
そんな事を今になって考えると、秀吉があれだけ必死に怒るのも無理はない、、、。