第2章 侵入者
「特に問題はねえな。さてと、さっさと俺達は本職に戻りますとするかね。リーダー」
「ちょっと待て」
「?」
リゾットはイルーゾォの持っているリストを確認する。
少女:リン
ジャポネーゼ(日本人)
1億リラ
特に変わった事項も書かれておらず、
・・・・・
書類上では、ただの少女だ。
アルビノの子に比べたら、大した額でもなく、一見すれば、国を跨いで人攫いにあった哀れな少女だ。
しかしリゾットには、“何か”が引っかかっていた。
「……」
スッ
「!」
リゾットは何と、女の子と同じ目線になるように屈んだ。
イルーゾォは思わずたまげて、「は?」と声を出してしまう。
暗殺チームのリーダーとあろう者が、子供と目を合わせている。
ギャングとしての威厳とかプライドとか全く気にせず。
まるで対等に接するような物腰の柔らかさだ。
(おいおい。一体何のマネだぁリゾット?徹夜の任務続きで、ボケてんじゃあねえだろうな?)
少女もまた、暗殺者が目を合わせてきて、顔色に緊張が走る。
「イタリア語は理解できるか?」
リゾットの問いかけに、日本人の少女は首を横に振る。
「おい。それって理解できるってことじゃあねェか?」
イルーゾォは思わずつっこみ、少女はハッと顔色を変える。
さっきまでの落ち着いた表情は完全に崩れて、一歩後退りするように動揺の色を見せる。
少女のそんな何気ない仕草でさえも、リゾットはじっくり観察する。
「おいおいリゾット。そのガキがどうしたってんだ?」
「……」
「あの、その子はッ…!」
『!』
扉の方から、別の声が上がる。
イルーゾォとリゾットの注意は、その子供の方へと変わる。
オッドアイのイタリア少年が、立ちすくみながらもこちらを見ていた。
“く…る…なッ…!”
「!」
リゾットはその時、少女の方から僅かに漏れる“声”を察知する。
“声“というにはあまりにか細く、何とか“声”に似せた空気に近かった。
それで理解した。
「そ、その子…しゃ、喋れないんです。喉、怪我しているから」
(やはりそうか……)