第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
「(お、お気遣いありがとうございます…)」
「それにマリアンヌ、喋れないって言ってたけど、それは生まれつき?医者には診てもらったことあるの?もしないなら私の勤務している病院で診てあげるから一度診察に来なさいね!」
「(は、はい……)」
そう言うと、マダム・レッドはマリアンヌのメモに王立ロンドン病院の住所を書いてやった。
「ではマリアンヌさん、これにて失礼致します。」
「じゃあねマリアンヌちゃん、葬儀屋の仕事に飽きたら窖(ウチ)においで。いつでも大歓迎だからね!」
「(あ、あ、あの……)」
セバスチャンは右手の甲に、劉は左の頬に軽くキスをすると、一行は馬車に乗って行ってしまった。
セバスチャンやシエルはもちろんの事、初対面の劉もマダム・レッドもマリアンヌを気に入った様だ。
見送りが済み、店に戻るとアンダーテイカーはいつものイスに座り、お気に入りの人体模型を磨いていた。
「お見送りはすんだのか〜い?」
「(はい。)」
「そうかい…」
軽く頷いて見せると、アンダーテイカーは持っていた布巾をカウンターに置き、「こっちにおいで」と長い前髪に隠れたままの視線でマリアンヌに伝えてきた。
イスの前までたどり着くと、先程セバスチャンと劉に触れられた部位を、アンダーテイカーは身につけていたグレーのストールてゴシゴシと拭き取りだす。
何故この箇所に2人が触れたのが分かったのだろうか。しかし、当の本人は口を真一文字に閉じて真顔で拭き取っている。
もしかしなくても気に食わなかったのだろう。
一通り拭き終えると満足したのか、アンダーテイカーはいつもの口元に戻り、マリアンヌの腕を引くと、跨がらせるように自身の膝に座らせた。
「今日は朝から忙しかったねぇ〜小生疲れちゃったよ。」
「(そうですね…)」
今日だけではない、ここ最近は切り裂きジャック事件のせいで検死にヤードの対応に多忙しだった。
早く事件解決してもらいたいのだが、マリアンヌにはいくつかアンダーテイカーに聞きたいことがあった。
「(あの…アンダーテイカーさん…)」
「ん?なんだ〜い?」
マリアンヌはアンダーテイカーの手を取り話始めた。