第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
マリアンヌが苦笑いを浮かべながらゴソゴソとポケットに入っている筆談用のメモとペンを取り出している時だった。
「ねぇねぇ、マリアンヌちゃん、こんな怪しいお店なんかで働くのは辞めて、ウチにこない?君ならチャイナドレスがよく似合いそうだから大歓迎だよー!」
「ちょっと劉!変なナンパはやめなさいよ。アンタの店だって怪しすぎるわ!転職するなら家の屋敷にいらっしゃいよ!グレルが頼りなくて困ってるのよ…」
「お、奥様〜……」
「(え?え?!)」
「おい!2人とも、やめないか……」
どうやら劉もマダム・レッドもシエル同様、マリアンヌがこの店で働いてるのに違和感を感じたのだろう。
我先にと自分の所へと勧誘をしだしたが、その時だった。
──ブァファ!!ギャハハハハハ!!ヒィ〜〜!──
「「「「!!!???」」」」
中から爆発音のような笑い声が響き、店の看板がガタンと傾いてしまった。
それと同時に扉が開き、ニッコリとセバスチャンが出てくる。
「どうぞお入りください。お話して頂ける様です。」
恐る恐る中に入ると、店中央のカウンターに寝転がり、ピクピクと息を上げているアンダーテイカーが目に入った。
「(アンダーテイカーさん…?)」
「ハァ…ハァ…マリアンヌ〜ヒッヒッヒッ……小生は理想郷を見たよ……さて…話の続きだね、なんでも教えてあげるよ…」
セバスチャンはいったい何をしたのだ?
ヨダレを垂らしながら遠くを見つめているアンダーテイカーだったが、マリアンヌが手を取ってやると、ヨタヨタとしながらもなんとか身体を起こし立ち上がった。
「昔からね〜ちょくちょくいるんだよ…“足りない”お客さんがね。」
「足りない?」
「そう、足りないのさ。“臓器”がね……」
「「「「「!!!」」」」」
「お客さんには棺で眠る前にキレイになってもらわないとだろう?その時にちょっとだけ検死(いじら)させてもらうのが小生の趣味でねぇ…」
初対面の3人の表情が硬い……
まぁ、臓器が足りない件も、アンダーテイカーの悪趣味な検死も、穏やかな顔で聞ける話ではないだろう。