第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
普通の人間ならこんな変態葬儀屋を前に笑いを取るような芸当、とてもできるものではない。
しかし、意外にもその気味の悪い要求に立候補した者が2人。
上海では新年会の眠れる虎と呼ばれていたと豪語する男、劉。
そして、社交界の花形と鼻息を荒くした女、マダム・レッド。
2人とも自信の程は満々であるが……
果たしてアンダーテイカーの笑いのツボをつくことはできるのだろうか…マリアンヌは少し不安げに見守った。
──「ふとんがふっとんだ!」──
「…………」
「だらしないわね!劉!」
──「でねー!そいつったらピー!がピー!だったの!さらにプー!がバキューン!っだったわけ!」──
「……………」
「(あぁ…やっぱり……)」
アンダーテイカーは棚から「❌」印のついたマスクを持ってくると黙って2人に装着をした。
どうやらお気に召さなかったらしい。
──1時間後──
「さて、残すは伯爵のみだよ。前回は伯爵のお屋敷でマリアンヌがお世話になったみたいだからね、約束通りオマケしてあげたけど…今回は、サービスしないよ〜」
そう、バレンタインの日にマリアンヌとシエルの間で交わされた口約束をきちんと守ったアンダーテイカー。
今回はサービスする気はなさそうだ。
「くそ!!」
「仕方ありませんね…」
すると、小さくため息をつきながらセバスチャンが主人のピンチを救うべく腰を上げた。
「へぇ…今回は執事君が何かしてくれるのかい?」
セバスチャンは頷くと、皆に一旦外に出るように指示をした。
「申し訳ございませんが、マリアンヌさんも外へお願い致します。」
「(は、はい…)」
「皆様、いいですね、絶対に、絶対に中を覗いてはなりませんよ…」
──ぱたむ──
すると、静かに扉は閉まった。
店の前に立たされてしまった4人。
すると、シエルがマリアンヌの顔を見上げると、呆れたように声をかけてきた。
「おい…毎回同じ事を聞いてると思うが、マリアンヌはアイツと四六時中一緒で頭がおかしくなったりしないのか?」
「(……え、えーと……)」
まぁ、シエルの質問も理解できなくはい。