第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
──ギィィィィィィ──
すると、シエルのすぐ近くに立てかけてあった棺の蓋がゆっくりとスライドするように動いた。
「よ〜〜こそ、伯爵……やっと小生特製の棺に入ってくれる気になったのかい……!」
不気味な店内から不気味な演出で登場したアンダーテイカーに、初対面の3人は卒倒寸前だった。
「(もう…アンダーテイカーさん、懲りないんだから。)」
マリアンヌはため息をつくと、ひとまずお茶の用意を始めた。
何故だが分からないが、アンダーテイカーは、シエルが来るときに限って、驚かすような登場をしてみせる。
毎回あの手この手で演出を変えてみせているが、当のシエル本人はもう呆れかえって驚きもしない。
それでもやめようとしないのだから不思議なものだ。
「そんなワケあるか、今日は……」
「言わなくていい…伯爵が何を言いたいのか、小生にはちゃ〜〜〜んとわかっているよ。」
シエルの唇を人差し指を使って軽く制止をすると、口角を上げて妖しい笑みをこぼす。
「ああいいうのは“表の人間”向きの“お客”じゃない。小生とマリアンヌでキレイにしてあげたのさ。」
「その話が聞きたい…」
「そうかい、それじゃあ話をしようか。ちょうどお茶も入ったみたいだし、その辺に座ってもらえるかい?」
マリアンヌは空の棺に腰掛けているシエル達に、ビーカーに注いだぬるめの紅茶を出した。
セバスチャンからは
最初に声をかけてきたのは
中国貿易会社「崑崙」の英国支店長、劉
赤毛の女性は元バーネット男爵夫人でシエルの叔母君、アンジェリーナ・ダレス(通称マダム・レッド)王立ロンドン病院勤務
そしてその執事
丸眼鏡と長い髪が特徴のグレル・サトクリフ
との紹介があった。
グレルはなんだかセバスチャンと比べると随分落ち着きが無く、あまり執事らしくない。
それになんだか……
「さて、聞きたいのは切り裂きジャックの事だろう?今頃になってヤードは騒ぎ出しているけど…」
なんだか違和感を感じたが、アンダーテイカーが話を始めたので、マリアンヌは棚から骨型クッキーの入った壺を手に取ると蓋をあけて差し出してやった。