第17章 最終章・君は小生の宝物
「浮かない顔だねェ〜?」
「(あっ、ごめんなさい…別にアンダーテイカーさんのせいではありません…)」
「じゃあどうしてそんな悲しそうな顔をしてるんだい?」
「(だって…私は…アンダーテイカーさんにしてもらってばかりです。使い古された私を拾ってくださったただけでもこの上ない幸せな事なのに、愛してもらって、支えてもらって、こんな長い間眠ったままの私の側にいてくださって……)」
「それの何が問題なんだい?」
アンダーテイカーはまったくマリアンヌの言おうとしている事が分からない様だ。
「(……私には…何もありません……)」
「何がだい?」
「(私ばかりしてもらってばかりで…アンダーテイカーさんにして差し上げれる事が何もありません…それが、心苦しいです。)」
こう言った所でアンダーテイカーは何も気にしないだろう。
今までずっとそうだった。
アンダーテイカーがマリアンヌに何かを要求した事など無い。
唯一マリアンヌに言った事といえば、“もう離さないよ”…くらいだろう。
「そうかい…じゃあマリアンヌ、ちょっとココに座っておくれ。」
口角を上げながら小さくため息をつくと、アンダーテイカーはマリアンヌを抱えて車椅子に座らせた。
「(あっ……)」
そこで自分の脚にまったく力が入らないことに気づく。
「脚に力が入らないんだろう?ずっと眠っていたからね。でも、リハビリをすればまたすぐ歩けるようになるから安心おし。」
「(………はい。)」
すると、アンダーテイカーは帽子を外し、前髪をかき上げると、マリアンヌが座る車椅子の前にスッと膝をついた。
「(………?!)」
春の暖かな日差しがアンダーテイカーの長い銀髪を、黄緑色の瞳を、優しく照らす。