第17章 最終章・君は小生の宝物
「(え……ウソ……)」
「ね?何も心配する事はなかっただろう?」
鏡に映った自分の姿は、ビャクとは正反対に記憶のままの姿だった。
「(ど、どうして……?)」
「まぁこれも小生の仮説だけど、魂と肉体が融合した事で、通常の年のとり方はしなくなったんじゃないのかな?この10年、ずっと小生はマリアンヌを見てたけど、18歳の時から何も変わっていない。」
「(そんな事って……でも、そのお話が本当なら、私…嬉しいです…やっぱり、いつまでも美しいままのアンダーテイカーさんの側で年老いるのは嫌ですから…)」
「そんな心配すること無いのにな〜」
「(お、女の人は…好きな人の前では…いつまでも若くありたいものなのです…)」
「そうかい〜、マリアンヌは可愛いなぁ〜」
「(キャッ!!)」
そう言って目茶苦茶にマリアンヌの頭を撫でては額にキスをした。
「(そういえば…お店はこの近くなんですか?)」
グルリと周りを見ると、自分達がいるのは芝生の原っぱだ。そして目の前には長い長い桜の並木道。
一見大きな公園のように見える。
そして、アンダーテイカーの隣には1台の車椅子。
コレに乗せられて歩いてきたのだろうか。
「さっきも言ったけど、今は旅行中なんだ。小生が店を構えたのは東京の繁華街新宿の歌舞伎町。ここは東京からずっと北に位置する岩手県北上市。」
「(イワテケン?キタカミシ?)」
「桜はね、満開になってもすぐに春風で散ってしまうんだ。君の傷も癒えてきたし、そろそろ目を覚ますだろうと思って、小生達は桜の開花に沿って北上していたんだよ。1番北の北海道に着くまでには目覚めるように祈りながらね…」
「(そう…だったんですか……)」
「マリアンヌが目を覚ました時は、満開の桜を見せて驚かせたかったからね〜北に向かいながら色んな桜の名所を観光して来たんだよ。でもなんて偶然だ。」
「(……え?)」
「ここ岩手県の展勝地は昔から桜の名所として日本の中でも特に有名な場所なんだ。しかも満開。桜の花達も君の目覚めを喜んでるみたいだ。」
「(そう…だったのですね……)」